嘘読書日記

読んでいない本、存在しない本への書評

【嘘読書】捏造される天才:「ぼくには数字が風景に見える」

サヴァン症候群」と聞いて、「レインマン」を連想したあなた。

もしかして映画通なんだろうか?

違うなら、あなたも「天才」の一人かもしれない。

 「ぼくには数字が風景に見える」は「サヴァン症候群」の著者によって書かれた、

彼の頭の中の「独自の世界」を説明するための書籍だ。

 

1. 共感覚は特別か?

共感覚」という言葉を聞いたことのある人は多いだろう。

また、この手の書籍やテレビ特集を見るたびに、

 

「俺にもああいう力があったらなあ・・・」

 

と思う人間は多いらしいし、同時に

 

「え、共感覚ってみんなにあるんじゃないの?

音楽とかさ、聞いてさ−、なんか硬い、とかあるじゃん?みたいな」

ことをしたり顔でTwitterに書いちゃう俺って特別〜な大学生も多いらしい。

 

       _,,;' '" '' ゛''" ゛' ';;,,
      (rヽ,;''"""''゛゛゛'';, ノr)
      ,;'゛ i _  、_ iヽ゛';,    お前それサバンナでも同じ事言えんの?
      ,;'" ''| ヽ・〉 〈・ノ |゙゛ `';,
      ,;'' "|   ▼   |゙゛ `';,
      ,;''  ヽ_人_ /  ,;'_
     /シ、  ヽ⌒⌒ /   リ \
    |   "r,, `"'''゙´  ,,ミ゛   |
    |      リ、    ,リ    |
    |   i   ゛r、ノ,,r" i   _|
    |   `ー――----┴ ⌒´ )
    (ヽ  ______ ,, _´)
     (_⌒ ______ ,, ィ
      丁           |
       |           |

 

そんな、「やべえ、俺って特別な才能溢れちゃってる~、マジでポップで、サブカルチャーにコミットしちゃって、アーティストのセンスも一杯だけど、授業もそれなり受けて頭良い感じ出ちゃってね?ね?」系大学生に向けて書かれた一節、

「お前、それ本物の前で言えんの?」の項に出てくる、サバンナのライオンの写真が先ほどのAAの起源であり、「サヴァン」の由来であることは大変有名である。

(詳しくは本書の255ページを読んで欲しい。もちろん嘘だが)

 

私は別に共感覚否定派ではないが、どうせ他人の「感覚」なんて、

我々には理解できないのだから、信じるも糞もねーだろ、と思うのだが。

 

2. 捏造される天才

しかし、こうした「特殊な力」と優劣の2面性を持つ存在に人間は弱いらしい。

 

これに関しては、以前このブログでも、

「神はどう作られるか-天才と狂人の狭間を信仰する人々」の書評において

ニューウェーブ系宗教の信者に絡めて以下のように論じている。

 

我々は「当たり前」のことよりも、「想像できない」ことの方を信じてしまいやすい。

それは、それに対する知識が欠如しているため、最適な判断が下せないこと、

加えて、そういう存在が「在る」ことで、自分の内面の「ダメな部分」を「良い部分」へと昇華できる、と「信じたくなる」ためである。

 

我々は「見たいもの」を見ようとしているに過ぎないし、

それが出来ると謳う「ホラ吹き」を都合よく持ち上げてしまうものなのだ。

(なお当ブログではそのような書評は書いていないし、

そのような書籍も存在しない)

 

3.  2面性を持つのは天才か、凡人か

本書では「アスペルガー症候群」、「サヴァン症候群」を持ち、

それに対する差別を受けた経験と、逆にメディア取材後の「天才」とされる経験を描き、

そうした周囲の人間の二面性に対する苦悩が綴られている。

周囲の人間の「障害を持つ劣等生」に対する嘲りも、

「恵まれた天才」に対する崇拝もどちらも根源は同じ他者に対する共依存性であり、

そうした「凡人」の恐ろしさを看過した一文で書評を終えたいと思う。

 

「私は自分の見えている世界が、他者に対して伝わらないことに一種の不安を覚えていました。しかし、今となっては、自分の見えている世界が他人にも見えている、と信じて疑わない事のほうが、ずっと恐ろしいのだと気付かされました。」(あとがきより)

(なお本書の「あとがき」とは言っていない)

(加えて、別にこの「あとがき」がどこかに存在しているとも言っていない)

 

評点

-ぼくには数字が風景に見える-

(最良5点)

サバンナ度:0

やべー、おれ、マジやべーわ、な大学生が読んでそう度:5

障害と差別について考えさせる度:4

 

 

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

ぼくには数字が風景に見える (講談社文庫)

 

 

 この書評は基本嘘であり、

書いてある意見は別に筆者の本音でもないので、

みんな存分に「俺って特別〜」ってやれば良いと思う。