【嘘読書】なぜ、誰もが名作と呼ぶのか:「カラマーゾフの兄弟」
名作と迷作は紙一重だ、と言うのは単なる凡人の妄想である。
名作は間違いなく名作なのだ。それが分からぬから凡人なのだ。
信じられないなら「カラマーゾフの兄弟」を読めば良い。
文学好きを名乗る人間がいたら、
今まで読んだロシア文学のタイトルを聞けばいい。
そして、「カラマーゾフの兄弟」を自信なさげに出してきたなら、
その人間は信用のおける文学家だ。
1. ロシアという帝国
カラマーゾフの兄弟は1800年代のロシアが舞台の小説である。
ソ連崩壊後の国土と資源で他国を圧倒する強国家のイメージが強い。
しかし、かつてのロシアは第三のローマを称し、
古代ローマ帝国の系譜を継ぐ、強力なキリスト教国家であり、農業国家であった。
カラマーゾフの兄弟はそんな時代のロシアを舞台にした、
世界初のタイムワープ・ラブコメディである。
2. 文学の一つの完成形:ロシア文学
多くのロシア文学がそうであるように、
カラマーゾフの兄弟もまた非常に長大な物語である。
長大さの理由は、ここで語られる世界観が非常に大規模であるためだ。
多くの民族、部族、そして近代民族国家が自分たちのルーツとなる「物語」を求めたように、
作者であるドストエフスキーも、自分たちの社会の意義を求めていた。
その一つの解がキリスト教的な教えであり、
別の一つが、一族という血の流れであり、
そして最後が国家という社会集団の歴史である。
これらはすべて、時間を超えて続く「物語」であり、
その物語の中で生きる登場人物であれば、
その原始から続くヒトツナギの意味の中を生きることができる。
すなわち歴史を信じ、自分たちの物語の中で安堵できるのだ。
しかし、ドストエフスキーはその中に仕掛けを取り入れた。
それこそがタイムワープである。
タイムワープはヒトツナギの物語の流れを逆転させ、
そこに生まれる意味の決定論を切り崩すギミックである。
タイムワープが行われることにより、
登場人物は、決定論的な人生と、それに抗う人生を生きることの選択が可能になる。
その選択こそ、個人として生きること/集団として生きることの軋轢の中を悶え苦しんだ
近代の幕開けを良く表現していると言えよう。
3. ロシア文学-その魅力について
ロシア文学の最大の特徴は、その深遠さであり、
綿密かつ精緻なプロットにある。
登場人物の数は非常に多く、舞台となる時代は非常に長い。
適当な目新しさの設定をバラまき、
最後の最後に突然、裏設定やメタ設定を持ちだして、
「俺、頭いいだろ?」というラノベとは、その書き手の計画性の高さが違うのだ。
ただ、生半可な気持ちで立ち向かうと、
開始10ページでブックオフに売り払うことになる。
ので、普通にラノベを読んでいた方が時間とお金の無駄にはなるまい。
まあ、でもこれは名作で、かの有名なウィトゲンシュタインも愛読書にしてたし、
カラマーゾフの兄弟が愛読書ですって言っとくと、
ファッション文学好き女子に「素敵、抱いて!」って言われるから、
もうすぐ新入生が入ってくる大学生はイメトレしとくといいよ。
評点
(全巻合わせての評点 最良5点)
荘厳さ:5
苦行度:5
ガーネットの名曲度:5
追記:この読書記録は嘘なので、そのまま語るとスグにバレるので気をつけてください
追記2:ガチ文学女子勢には一瞬でバレるから、そういう見栄は張らない方がいい